インドの売春街の子供たちを想う(その5)

モリンガ社会事業の目標

モリンガ栽培による社会事業の主な目的は、

子供自身の成長を助けるために、子供達の栄養不足の改善を進めることです。極貧の売春婦から生まれてくる子供は、もともと母親から受け継ぐ免疫力が脆弱です。その後も十分な栄養が採れず、発達障害、体力の脆弱性、免疫力の低下から感染症にかかり易く、疾病、死亡に至ることが少なくありません。発展途上国の4大栄養欠乏症(ビタミンA、たんぱく質、鉄分、ヨウ素の各欠乏)は人間の成長に欠陥をもたらします。子供の健全育成にとって健康の維持向上は最優先の課題です。モリンガを食することで、4大栄養欠乏症を減少させることができます。

子供を取巻く環境の整備、改善をはかるため、貧困な農村部の地域社会の開発を進めることです。モリンガ農園のあるパトダ地区はデカン高原内にある典型的なインドの農村地帯です。

売春婦の主な供給源もまた農村部です。農村部を豊かにすることで、少女達は売られずに済みます。今すぐ第1世代の大都会の売春婦は救えなくとも、第2世代の子供、第3世代の孫の少女達の幾らかは救うことはできます。インドではカースト制度(身分・性差別制度)が歴史的に永い間存続してきました。法律で禁止されているものの、永い慣習が人々の脳裏に無意識のうちに焼き付いています。特に農村部は今でも女性への差別がまだ色濃く残っています。農村部の女性にエンパワーメントをつけることが人々に人権意識を高めることに繋がります。女性も自立した生活ができ、安心して子供達を育てることができるようになります。

モリンガ栽培事業は子供達の健全育成のために始めたものですが、それに留まらず雇用機会の拡大や地域経済の活性化を通じ、貧困の撲滅、生活・衛生環境の改善、子供達の教育機会の拡大、婦人達の自立などの生活環境全般の改善に結びつきます。また山林農地の土壌保全、二酸化炭素の吸収による地球環境へのささやかな貢献も期待されます。

従来の「釣った魚を与える支援」から、自立した生活が出来るように「魚の釣り方を教える支援」へと一歩前進した支援となります。将来を担う子供達の健全育成は、大人の責任であり、義務でもあると思います。それは日本であろうと、インドであろうと何ら変わりません。

一人でも多くの子供が明日に希望を持てるように、更なる社会貢献が出来ればと願って止みません。

(終わり)